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Lee-Byung-hun addicted

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第11話

『釜山で愛を抱きしめて』 第11話



何故、場末の旅館に泊まりたいと言い出したのか自分でもよくわからない。
ただ、あれだけ彼の傍で着るのを楽しみにしていたこのドレスが今はとてつもなく重くてこのドレスを着てきらびやかなホテルに戻るのが嫌だったのかもしれない。
そしてインウとテヒのように魂を感じながら何もないところで愛し合いテヒのように彼をそっと抱きしめたいと思っていたのは確かだった。
しかし、まるで映画そのままの部屋の中を見たとき私はその部屋に自分がとても不釣合いだと悟った。
飾らない部屋で生まれたままの姿で彼に愛されるには私はあまりにも臆病で自分でも驚くほど冷たく弱くなっていた。
嘘は人を弱くするのだろうか。
壁を叩き床を叩きトイレを覗きはしゃいだふりをしながらこの部屋にない自分の居場所を必死に探した。
彼が何故黙っているのか・・彼が私にどう話しかけていいのか考えているのが手にとるようにわかる。
私はいったいどうしたいのだろう・・・・。
彼に抱きしめてもらいたい・・・彼の言葉を嘘に変えた私ではないいつもの私に戻って彼に抱いて欲しかった。
いっそ雨でも降っていてびちゃびちゃに濡れたこのドレスを脱げたなら生まれたままの姿で彼に飛びつけるかもしれなかったのに・・・雨のちからでも借りないとそれさえできない自分に私は正直失望していた。
「雨・・降ってなかったね。」私は知らず知らずのうちにそんな言葉を口にしていた。
どうしてと問い返す彼・・口実なんて必要ないという彼の真っ直ぐな目が臆病だった私に少しの勇気を分けてくれた。そして彼の温かい手が私の冷たくなりかけた心を温める。
そして私は自分の想いを彼に伝えた。ありのままに。飾ることなく。
彼の答えはいつものようにユーモアに満ちていてそれでいて温かかった。いつもと変わらずに私を包んでくれる。
「テヒにならなくていいんだよ。君は君で僕は僕なんだから。僕が抱きしめて包んであげれば同じことさ。ドレスは僕が脱がして嫌なことは忘れさせてあげるから。あとは君が幸せな気分になって僕に大きい声でプロポーズをすればいい。」

彼の唇が私に触れた時、愛していると聞こえた気がした。それは声ではない何か。彼がドレスを優しく脱がせてくれた時、彼は私の後悔と迷いも一緒に取り去ってくれた。そして彼はゆっくりと私のすべてを包み、愛でいっぱいに満たしてくれた。
彼の腕の中で私は彼に言った。「私・・・結婚したい」と。
彼は今まで見たこともないような笑顔で「誰と?」と私に聞き返した。
「もう・・・意地悪ね。貴方しかいないじゃない。」
私は悔しそうにそう答え彼にしがみつく。
悔しいけれどこんな時にそんな意地悪をいう彼が私は大好きだった。
彼は笑いながら私をそっと抱きしめて「ああ・・結婚しよう」と一言。
そしてそっとおでこにキスをしてくれた。
私のいたずら心が騒ぎ出す。
私は彼に抱かれながら「誰と?」と思いっきり意地悪に問い返した。
彼は嬉しそうに笑いながら「君と」と一言。
そして意地悪な私の口を塞ぐと私の中にまた愛を注ぎ込みはじめる。
あふれ出す愛の中で彼は言ってくれた。インウのように。
「もし・・生まれ変わってもきっと君を見つけられる」と。
「私もきっと見つけられる」
「・・・・でもちょっと自信がないからもっとよく貴方を目に焼き付けておいていい?」
私は笑って彼にそう告げた。
「え?」
戸惑う彼をよそに私は彼の爪を彼の睫毛を彼の吐息のひとつひとつを愛し始めた。心からそうしたかったから。私の身体を通してあふれ出した愛をすくって彼にいっぱいかけてあげたかったから。そして私は私の魂で彼を包み込んだ。



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